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  • 執筆者の写真平尾

「プラチナ社会」の実現に向けて

2018年1月に、(株)地域経営プラチナ研究所という会社を立ち上げました。社名の看板を掲げたところ、「何をする会社?」とよく聞かれたものです。確かに、何をする会社かわかりませんよね。

実は、「プラチナ社会」を作ろうとする会社なんです。


プラチナ社会とは、環境と共生し、雇用があり、意欲のある高齢者が社会参加し、多世代が心もモノも豊かに暮らせる社会です。未来のあるべき社会像と考えています。これは小宮山宏先生(プラチナ構想ネットワーク会長・三菱総合研究所理事長・東京大学第28代総長)が提言されたもので、私も深く共鳴して社名にプラチナを冠しました。 

日本は長らくGDP(国民総生産)拡大を図ってきて、確かに物質的に豊かになり、世界トップクラスの長寿を実現してQOL(生活の質)は向上しましたが、今はもう、あちこちにひずみが出てきています。環境問題、格差拡大、高齢化による医療費増大、ひきこもり、雇用の悪化など課題が山積しています。

本来こうした課題は公共性の高い課題なので、市場からの利益を追求する民間事業者には縁遠いと思われがちでした。いや、そうじゃない、社会的課題を解決し人々のQOLを高めること自体が新産業を創出することになり、雇用を生んで結果的にGDPを引き上げることになる、という道筋を初めて明確に主張したのが小宮山先生でした。まだはっきりと姿を現していない需要を「創造型需要」と位置づけ、日本は自らの課題解決を図る中で創造型需要を掘り起こし、新産業を生み出し、世界に輸出して先行者利得を得ることを目指すべきである、といち早く提言しています(2010年3月26日 日経新聞経済教室)。

ハーバード大学のマイケル・ポーター教授も、「社会的ニーズ、例えば、健康、住宅整備、栄養改善、高齢者対策、環境負荷の低減などはグローバル経済の中でいまだ満たされておらず、その規模は計り知れないほど大きい」と述べ、社会的ニーズの産業化として「共通価値の創造」(CSV:Creating Shared Value)を提唱しました。小宮山先生の提言の翌年の2011年のことでした。


社会的課題に対応すると言っても、「誰がそれをやるのか?」と思いますよね。

地域の中には、民間企業はもちろん大学、NPO、経済団体、行政、市民などが個々バラバラに存在していて、「困りごと」が実は「市場」につながるという認識をまだ共有していないように思うのです。何をおいても「対話」を通じて、地域課題を解決することが企業利益を生み出し、それが地域社会のQOLを高める、ということを共有さえすれば、「創造的需要」を掘り起こすことはそれほど困難なことではありません。「地域プラットフォーム」という場を設けて、そのテーブルに課題を並べてみると、おのずとプレーヤーとしての民間企業、サポーターとしての行政や大学などの役割が見えてきます。特にここが、現場を熟知し、関係者の知見やノウハウの情報があり、ネットワークと信頼のある市町村行政の出番です。

今まで本当に多くの市町村を見てきました。膨大な行政事務を抱え、お金がない、人がいない、だけど住民に提供しなければならないサービスは、質的にも量的にもどんどん増えていきます。職員は疲れ果て、「もう勘弁してくれ」という気分で行政の中へ閉じこもってしまいます。これでは、本来の行政の持つ情報もネットワークも信頼も文字通り「お蔵入り」です。

これが望ましい状況であるはずがありません。行政は確かに一定の住民サービスを提供する「サービス・プロバイダー」であることは間違いありませんが、みんなの力を発揮できる場「地域プラットフォーム」を作る「プラットフォーム・ビルダー」としての重要な仕事があるのです。地域プラットフォームは、地域全体の応援団であり、地域みんなで事業リスクを薄く広く分散する役割を担うことで、地域内の投資を活発化させ、起業家の背中を押して新産業の創出につながっていくと思うのです。


さて、「プラチナ社会」を実現するために、地域経営プラチナ研究所は何ができるのでしょうか。私は都銀や地銀で銀行業務に携わり、金融系シンクタンクで地域課題に長い間向き合ってきました。その後、行政に転じ商工観光畑で企業を巻き込みながら地域プラットフォームの実務も担当してきました。中央官庁のお役人や大学の研究者から地域の現場担当者まで、官民両方の強みと限界を味わいながら、実に多くの志をもつ魅力的な人たちに出会うことができました。

こうした篤実の士の力を借りながら、当研究所はプラチナ社会の啓蒙活動から地域プラットフォームづくり、「データ」と「対話」による計画づくり、地域経済分析(地域産業連関表作成など)、人材育成などの分野で地域社会の創造に力を尽くしたいと考えています。

ざっくりと言ってしまうと、当社の仕事は行政と民間を「志をもって」つなぐビジネスと言えるかもしれません。今まであまり注目されない分野なので、イメージが伝わりにくく、私自身も常に試行錯誤の毎日です。それでも何とか食い詰めずに3期目を迎え、ようやくホームページらしきものも立ち上げることができました。「プラチナ社会」の実現に向けて、そして自らを育ててくれた地域の豊かな明日を目指して、さらに歩んでいきたいと思っています。


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